東京地方裁判所 昭和41年(ワ)3565号 判決
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〔事実〕第一、申立
一、原告
1 被告は別紙図画および説明書記載の組立式透明ケースを製造し、販売してはならない。
2 被告は原告に対し金一七五万円およびこれに対する昭和四一年九月一日から支払ずみまで年五分の割合による金員の支払をせよ。
3 訴訟費用は被告の負担とする。
との判決および第二項につき仮執行の宣言を求める。
二、被告
主文と同趣旨の判決を求める。
第二、請求の原因
(原告の実用新案権)
(一) 原告の夫訴外木勢喜代治はつぎの実用新案権を有していた。
登録番号 第七七六三〇六号
考案の名称 組立式透明容器
出 願 日 昭和三八年一二月二五日
公 告 日 同四〇年三月一五日
登 録 日 同四〇年八月一七日
原告は昭和四〇年一一月八日訴外人からこの権利を譲り受け、同年一二月二〇日その登録を経由した。
(二) 前記実用新案の登録請求の範囲には、つぎのように記載されている。
「任意の合成樹脂を用いた比較的硬質の板を型打して四周に中空の突周縁を形成した底板に同質の板に柔軟皮膜を高周波接着して接続した前後に自由に反転する四枚の側壁を嵌合し同じく透明板を型打して四周に補強突条を形成した蓋を冠せた組立式透明容器」<以下省略>
〔判決理由〕(原告の実用新案権)
一原告が本件実用新案権を有すること、その実用新案登録請求の範囲の記載が原告の主張するとおりであることは、当事者間に争いがない。
(本件考案の技術的範囲)
二本件考案の構成要件について考察すると、原告の主張するように、合成樹脂の比較的硬質の四枚の板を柔軟皮膜で接着した前後に自由に反転する側壁と、同質の透明板の四周に補強突条を形成した蓋とを備え、これと底板とを結合した組立式透明容器であることは、被告の認めるところである。
ところで、底板に関しては、それが合成樹脂の比較的硬質の板を型打して四周に中空の突周縁を形成した底板であることに被告の認めるところであるが、被告はその中空突周縁の高さがそれによつて囲まれる凹部に物品をいれるに足りる程度のものでなければならないと主張する。
成立に争いのない甲第二号証によれば、本件実用新案の明細書における考案の詳細な説明の項には「本考案は人形、かつら、造花あるいは菓子類などの容器として使用し、または側壁5を取除き蓋7を直接底板1に冠せて小物入れとしても使用できるものである。このように本考案では側壁5を使用すると否とで二様に使用できる」との記載のあることが認められる。この本件考案の効果からみるとき、中空突周縁は、側壁を用いないで蓋を直接に底板に冠せた場合に中空突周縁によつて囲まれた凹部が小物入れとして使用できる程度の高さを備えていることを要するものと認めるほかはない。
(被告製品および本件考案との対比)
三被告製品が別紙図面および説明書記載のとおりのものであることは、当事者間に争いがない。
被告製品を本件考案と対比すると、両者の側壁と蓋とが同一であり、両者ともそれぞれそれらと底板とを結合した組立式容器であることは、被告を認めて争わぬところである。
争いは、被告製品の底板の四周にある突条が本件考案にいう中空突縁に当るかどうかであるが、被告製品であることに争いのない検乙第二号証によれば、被告製品の底板の周囲にある突条は一ないし二ミリメートルであることが認められる。したがつて、蓋を直接に底板に冠せる場合底板と蓋との間にはほとんど間隙がなくとうてい小物入れとして使用することができないことは明らかである。これに反する原告本人の供述は、採用に値しない。してみれば、本件考案における中空突周縁が蓋を直接底板に冠せた場合、小物入れとして使用できる程度の高さを備えていることを要すると解される以上、被告製品における突条が本件考案における中空突周縁に該当しないものといわなければならない。また、両者の効果が異なる以上、均等の主張も成立する余地がない。
したがつて、被告製品は本件考案の技術的範囲に属しないものといわねばならない。
(結論)
四よつて、原告の本訴請求はその余の点について判断を加えるまでもなく、失当であるから棄却し、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八九条を適用して、主文のとおり判決する。古関敏正 吉井参也 小西礼)